築三十年の古い木造アパートに引っ越した初夜、キッチンの隅を走り抜ける黒い影を目撃したときの絶望感は、今でも鮮明に思い出せます。その日を境に、私の日常はゴキブリとの戦いへと一変しました。当初、私が真っ先に手に取ったのは、昔から聞き馴染みのあったバルサンでした。最も強力そうな「煙タイプ」を選び、食器をビニールで覆い、火災報知器に専用カバーを被せ、一大決心で火をつけました。規定の時間を過ぎて帰宅した際、床に転がっていた数匹の骸を見て、勝利を確信したものです。しかし、一ヶ月も経たないうちに、再び小さな幼体が現れ始めました。バルサンが効かなかったのか、あるいは別の原因があるのか。悩んだ私は、次にアースレッドの「プロ仕様」を試してみることにしました。こちらは水を使うタイプで、火を使わない安心感がありました。アースレッドを使用して驚いたのは、その後の「持続感」でした。アースレッドを焚いた後は、不思議と新たな侵入者が現れるまでの期間が長く感じられたのです。この体験を通じて私が気づいたのは、アースレッドとバルサン、どちらが優れているかというよりも、それぞれの製品が持つ「得意分野」をいかに自分の環境にマッチさせるかという重要性でした。バルサンは、その強力な煙の噴射力で、古いアパートの複雑な建付けの隙間に潜む個体を「一気に叩き出す」力に長けていました。対してアースレッドは、最新の薬剤技術を駆使して、生き残った個体や新たに外から入ろうとする個体に対する「環境のバリア」を作る感覚に優れていたように思います。もし、私が最初から「まずはバルサンで一掃し、その後にアースレッドの待ち伏せ成分を活用する」という戦略を立てていれば、あんなに長い間、不快な音に怯える必要はなかったのかもしれません。今では、季節の変わり目にはアースレッドを、大規模な大掃除の後にはバルサンを、といった具合に、自分なりのローテーションを組んでいます。どちらか一方が「最強」なのではなく、両者の特性を理解して自分の家の弱点を補うことこそが、本当の意味での防虫管理なのだと、あの古いアパートでの格闘は教えてくれました。今、ゴキブリ対策でどちらを買うか迷っている方がいるなら、まずは一度、今の部屋に「隠れ場所」が多いのか、それとも「外からの入り口」が多いのかを観察してみてください。その答えが、自ずと手に取るべき一本を教えてくれるはずです。
アースレッドとバルサンを使い分けた私のゴキブリ駆除記