毎日やってくるアシナガバチを、ただの「害虫」として敵視するのは、少し早いかもしれません。実は、彼らは私たちの生活にとって有益な働きをしてくれる「益虫」としての一面も持っているのです。その最大の功績は、優れたハンターとして、庭の害虫を捕食してくれることです。アシナガバチの主食は、チョウやガの幼虫、つまり芋虫や毛虫です。庭のバラや家庭菜園の野菜について、葉を食い荒らすっかいな害虫たちを、彼らは熱心に狩ってくれます。農薬を使わずに害虫をコントロールしてくれる、いわば自然のガーデナーのような存在なのです。もし、庭でアシナガバチがホバリングしながら植物の葉の裏を覗き込んでいるのを見かけたら、それは巣作りの場所を探しているのではなく、害虫パトロールをしてくれているのかもしれません。この益虫としての一面を考えると、アシナガバチの巣を見つけても、必ずしもすぐに駆除する必要はない、という選択肢も生まれてきます。重要なのは、その巣が「どこにあるか」です。例えば、家の裏手にある高い木の枝や、人が普段まったく近づかない物置の奥などに巣があり、日常生活に全く支障がない場合。このようなケースでは、彼らのテリトリーを尊重し、刺激しないように注意しながら、そっと見守るという「共存」の道も考えられるのです。彼らが巣立っていく秋まで待てば、巣は空になり、危険はなくなります。しかし、この共存という選択には、注意深い状況判断が不可欠です。巣が玄関の近くやベランダ、子供の遊び場の近くなど、生活動線に近い場所にある場合は、話が別です。どんなにおとなしいアシナガバチでも、巣に近づけば防衛本能から攻撃的になります。また、家族にアレルギー体質の人がいる場合や、小さな子供、ペットがいる家庭では、万が一のリスクを考慮し、共存は避けて早期に駆除するのが賢明です。アシナガバチを一方的に悪者と決めつけず、その生態と役割を理解した上で、自宅の状況に合わせて駆除か共存かを冷静に判断することが求められます。
益虫としての一面も。アシナガバチとの共存は可能か?