ワラジムシが家の中や庭で大量発生しているのを見ると、多くの人は「何か悪いことをする害虫なのではないか」と不安に思うでしょう。しかし、彼らが人間に与える影響を正しく評価すると、その答えは決して単純なものではありません。結論から言うと、ワラジムシは「基本的には無害な、むしろ益虫としての側面が強い生き物」と位置づけるのが適切です。まず、害虫ではないと言える最大の理由は、彼らが人間やペットに対して、直接的な危害を一切加えない点にあります。ワラジムシには毒はなく、人を刺したり咬んだりすることもありません。また、ゴキブリやハエのように、病原菌を媒介して衛生的な問題を引き起こすこともありません。さらに、シロアリのように家の木材を食い荒らし、建材にダメージを与えることもありません。彼らの主食は、あくまで腐敗した植物や、菌類、そして仲間の死骸などです。では、益虫としての側面とは何でしょうか。それは、彼らが自然界における「分解者」として、非常に重要な役割を果たしている点です。庭や花壇にいるワラジムシは、落ち葉や枯れた植物を食べることで、それらを細かく分解し、土に還す手助けをしています。彼らの活動によって、土壌はより豊かになり、他の植物が育ちやすい環境が作られるのです。つまり、彼らは庭の「掃除屋」であり、「土壌改良の専門家」でもあるのです。ただし、そんな彼らにも、ごく稀に「害虫」と見なされてしまう側面がないわけではありません。それは、彼らが大発生し、餌となる腐植物が不足した場合に、植えたばかりの野菜の苗や、柔らかい新芽、イチゴの果実などを食害してしまうことがあるためです。しかし、これはあくまで例外的なケースであり、健全な植物体を積極的に攻撃することはほとんどありません。総合的に見れば、ワラジムシの存在がもたらすメリットは、ごく稀に起こるデメリットをはるかに上回ります。彼らの存在は、むしろその場所の土壌が豊かで、生態系が健全であることの証しとさえ言えるのです。