ガーデニングの楽しみの一つは、日々成長する植物の姿を観察すること。しかし、その葉の裏に目をやると、びっしりと産み付けられた小さな虫の卵を見つけ、ぎょっとすることもあるでしょう。庭の植物につく虫の卵は、すべてが駆除対象の「害虫」とは限りません。中には、庭の平和を守ってくれる「益虫」の卵も存在します。むやみに駆除する前に、その違いを少しだけ知っておきましょう。まず、害虫の卵として代表的なのが「アブラムシ」です。非常に小さく、緑色や黒色の粒が、新芽や若い葉に密集していることが多いです(厳密には成虫が直接子供を産むケースもありますが、卵も産みます)。植物の汁を吸って弱らせるだけでなく、病気の原因となるウイルスを媒介することもあります。また、緑色の野菜の葉に、黄色や白っぽい小さな粒が一つずつ、あるいは数列に並んで産み付けられていたら、それは「モンシロチョウ」などのチョウやガの卵かもしれません。孵化した幼虫(アオムシなど)は、葉を旺盛に食い荒らします。緑色や乳白色の粒が、数十個の塊で幾何学的に並んでいたら、それは「カメムシ」の卵の可能性が高いです。孵化すれば、植物の汁を吸うだけでなく、あの独特の悪臭問題に悩まされることになります。一方で、私たちを助けてくれる益虫の卵もあります。その代表が「テントウムシ」です。彼らの卵は、黄色からオレンジ色をした、ラグビーボールのような長円形で、数十個がまとまって葉の裏などに産み付けられています。テントウムシの幼虫も成虫も、アブラムシを大好物としており、一匹で何百というアブラムシを食べてくれます。もし、アブラムシが大量発生している場所の近くでこの卵塊を見つけたら、それは未来の助っ人たちです。大切に見守ってあげましょう。庭は、小さな生き物たちの生命がせめぎあうミクロな世界です。虫の卵を見つけたら、一呼吸おいて観察し、それが敵なのか味方なのかを考えてみる。そんな視点を持つことも、ガーデニングの奥深い楽しみ方の一つかもしれません。