あれは、夏の終わりの蒸し暑い日のことでした。我が家の二階の窓のすぐ外、軒下に、ソフトボールほどの大きさの、禍々しいマーブル模様の塊がぶら下がっているのを、妻が発見しました。キイロスズメバチの巣です。私たちはパニックになりました。インターネットで、いくつかの駆除業者を検索し、その中で、ひときわ安い料金を提示している業者を見つけました。「スズメバチ駆除、8,800円〜」。相場が数万円であることを考えると、破格の安さです。私は、少しの不安を感じつつも、その安さに惹かれ、すぐに電話をかけました。電話口の男性は、「今日中に伺います」と、威勢の良い返事をくれました。数時間後、やってきたのは、Tシャツ姿の若い男性一人だけでした。彼は、巣を一目見るなり、「ああ、これは高所作業になるんで、追加で1万5千円ですね。あと、巣が大きいんで、プラス1万円です」と、こともなげに言いました。話が違う、と思いましたが、目の前の恐怖を早く取り除きたい一心で、私は了承してしまいました。男性は、ホームセンターで売っているような、白い防護服に着替え、長い棒の先に殺虫スプレーを取り付けただけの、簡素な道具で作業を始めました。巣に薬剤を吹きかけると、何十匹という蜂が、怒り狂ったように飛び出してきます。その光景は、まさに地獄絵図でした。作業は30分ほどで終わり、男性は、ボロボロになった巣の残骸をゴミ袋に入れ、「はい、終わりです」と言って、合計3万3千円の現金を請求し、嵐のように去っていきました。しかし、本当の悪夢は、そこからでした。翌日になっても、巣があった場所の周りを、何十匹もの「戻り蜂」が、殺気立って飛び回り続けたのです。業者に電話をしても、「それは仕方ないですよ」と、取り合ってくれません。結局、私たちは、一週間以上、窓を開けることもできず、恐怖の日々を過ごすことになりました。この苦い経験から学んだのは、「安いのには、理由がある」という、単純な真理でした。
私の失敗談、格安業者に駆除を頼んだ結果