なぜ、本来は屋外の生き物であるはずのゲジゲジが、私たちの家の中に姿を現すのでしょうか。その出現は決して偶然ではなく、彼らの生態に基づいた、明確な理由と目的が存在します。ゲジゲジが家の中に侵入してくる背景には、彼らが生命を維持し、活動するために不可欠な三つの条件、「湿度」「暗闇」、そして「餌」が、あなたの家に揃ってしまっているというサインが隠されています。第一に、ゲジゲジは極度の乾燥を嫌い、常に湿度の高い環境を好みます。彼らの体は薄い外皮で覆われており、乾燥した空気の中では体内の水分が奪われ、長く生きることができません。そのため、梅雨の時期や秋の長雨の季節など、屋外の湿度が高まる時期に、より安定した湿潤環境を求めて家の中に侵入してくることがあります。特に、風呂場や洗面所、キッチンのシンク下、結露しやすい北側の部屋の壁際などは、彼らにとって砂漠の中のオアシスのような場所なのです。第二に、彼らは光を嫌う夜行性のハンターです。昼間は物陰に潜み、夜になると活動を開始します。家の中には、家具の裏や押し入れの奥、床下、壁の隙間など、彼らが安心して身を隠せる暗い場所が無数に存在します。これらの場所は、彼らにとって安全なシェルターとなるのです。そして、第三の、そして最も重要な理由が「餌」の存在です。ゲジゲジは肉食性で、ゴキブリやクモ、ダニといった小虫を捕食します。もしあなたの家にこれらの害虫が多数生息している場合、そこはゲジゲジにとって、獲物が豊富な絶好の狩り場となります。ゲジゲジが頻繁に出没するということは、裏を返せば、あなたの家が他の害虫にとっても住みやすい環境であることの証拠とも言えるのです。彼らの侵入経路は、私たちが想像する以上に多様です。開けっ放しの窓やドアはもちろんのこと、網戸の破れやサッシの隙間、排水口、エアコンの配管を通すために壁に開けた穴の隙間、換気扇、建物の基礎部分のひび割れなど、ほんのわずかな隙間さえあれば、その平たい体で巧みに侵入してきます。ゲジゲジの出現は、家の快適性と衛生環境を見直すための、重要な警告と捉えるべきでしょう。
ゲジゲジが家に出る理由と侵入経路