無数の脚を持つ、細長い虫。この共通点から、多くの人が「ゲジゲジ」と「ムカデ」を混同し、ゲジゲジに対してもムカデと同様の強い恐怖心や警戒心を抱いてしまいます。しかし、この二者は生物学的に全く異なるグループに属しており、その姿形、生態、そして何よりも人間に対する危険度において、決定的な違いが存在します。この違いを正しく理解することは、無用なパニックを避け、適切な対応を取るために非常に重要です。まず、最も分かりやすい見た目の違いは「脚の長さと数」です。ゲジゲジの脚は、体の幅よりもはるかに長く、まるで細い糸のようです。この長い脚を使って、驚異的なスピードで走り回ります。脚の数は、成虫で十五対(三十本)と決まっています。一方、ムカデの脚は体に比べて非常に短く、がっしりとしています。この短い脚で、体を波打たせるようにして進みます。脚の数は種類によって様々で、十五対のものから、百対を超えるものまでいます。次に、「体の形と色」も異なります。ゲジゲジの体は、やや平たく、ずんぐりとしており、色は灰色がかった褐色で、あまり光沢がありません。対して、ムカデの体は細長く扁平で、多くの種類は黒や赤褐色で、毒々しい光沢を放っているのが特徴です。そして、最も重要な違いが「人間への危険性」です。ゲジゲジは、基本的におとなしい性格で、人間を自ら攻撃してくることはありません。顎の力も弱く、人間の皮膚を咬み破ることは困難です。そして何より、人間に害を及ぼすような毒を持っていません。衛生害虫ではなく、むしろゴキブリなどを捕食する益虫です。しかし、ムカデは全く異なります。彼らは非常に攻撃的で、身の危険を感じると躊躇なく人間に咬みついてきます。その牙には強い毒(神経毒や溶血毒など)が含まれており、咬まれると激しい痛みと腫れ、しびれを引き起こします。重症化すると、アナフィラキシーショックを起こし、命に関わることさえある、極めて危険な害虫です。もし家の中で遭遇した場合、長い脚で俊敏に走り去るのがゲジゲジ、短い脚で体をくねらせて進むのがムカデ、と覚えておくと良いでしょう。ゲジゲジであれば静かに見逃す選択肢もありますが、ムカデであれば、安全を確保した上で、確実な駆除が必要となります。
ゲジゲジとムカデの決定的な違いとは