お米に虫が湧いているのを発見した時、「もったいない」という気持ちから、「虫を取り除けば食べられるのでは?」「加熱すれば大丈夫だろう」と考える人がいるかもしれません。確かに、コクゾウムシなどの米の害虫は、それ自体に毒を持っているわけではなく、誤って数匹食べてしまっても、基本的には人体に大きな害はないとされています。しかし、その事実を知った上で、果たして私たちは心から「美味しい」と感じながら、そのお米を食べることができるでしょうか。答えは、ほとんどの場合「ノー」でしょう。「食べられるか、食べられないか」という科学的な事実の問題と、「食べたいか、食べたくないか」という感情的な問題は、全く別次元の話なのです。まず、衛生的な観点からも、虫が湧いたお米を食べることは推奨されません。目に見える成虫を取り除いたとしても、お米の中には、虫のフンや、脱皮した後の抜け殻、そして目に見えないほどの小さな卵が無数に含まれている可能性があります。また、虫が米粒の内部を食い荒らしたことで、お米の栄養価は損なわれ、風味も著しく劣化しています。炊き上がったご飯は、どこか古米のような匂いがしたり、食感が悪かったりすることがあります。さらに、心理的な影響も無視できません。一度、お米の中をうごめく虫の姿を見てしまった後では、たとえ虫を一匹残らず取り除いたと信じていても、ご飯を口に運ぶたびに、その残像が脳裏をよぎるでしょう。その一口に、虫の死骸やフンが混じっているかもしれないという疑念は、食事という本来楽しいはずの時間を、苦痛なものに変えてしまいます。そして、ごく稀ではありますが、虫の死骸やフunがアレルゲンとなり、アレルギー反応を引き起こす可能性もゼロではありません。これらの理由から、虫が湧いたお米は、たとえ科学的には「無害」に近いとしても、私たちの心と体の健康のために、「食べずに処分する」のが最も賢明で、そして唯一の正しい選択と言えるのです。
虫のいるお米は食べられる?食べたくない